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art のための table talk vol.6レポート

  • kawaruaidanobijyut
  • 2024年8月1日
  • 読了時間: 4分

[7月のトピック]  

第6回 アートワーカーと権利 

[日時]  

2024年 7 月 20日(土) 15:30〜17:30 

[会場]  

ユナイトメントガーデンズ(マルヤガーデンズ 4 階) 鹿児島市呉服町 6-5

[ゲスト]

小田原のどか(彫刻家・評論家)  

[参加メンバー]  

かわるあいだの美術実行委員(木浦奈津子/画家、さめしまことえ/美術作家、原田真紀/インディペンデント・キュレーター、平川渚/美術作家)  

黒岩美智子(ガーデンズシネマ支配人)




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「かわるあいだの美術2023 日常へのまなざし/象るふるまい」展を5月頃からバタバタと準備し開催したのは、9月に鹿児島市立美術館と霧島アートの森、そしておとなり熊本のつなぎ美術館で、10日間ほど現代美術の特別展の会期が重なるミラクルが起こることが分かったからだ。フライヤー上だけでもその展覧会たちと連携し、情報発信して南九州の現代美術の機運を盛り上げる意図があった。

当時、つなぎ美術館で個展(https://www.tsunagi-art.jp/event/827/)を開催していたのが小田原のどかさん。そのご縁から、かわるあいだの美術実行委員会との交流が始まり、小田原さんが発起人の「美術をめぐる脱中心の実践」にメンバーとして参加することになった。北海道や秋田、広島、沖縄など美術や経済の中心から離れた土地において、その土地に住むアートワーカーの仕事や生活をめぐり、それぞれ固有の課題に取り組むアーティストやサポーターの活動を知った。そこで得た学びや、全国的にアートワーカーに関するこれまでの慣習を見直す動きを鹿児島で共有し、またこの地の課題を考えるための第一段階として、トラブルが起こった現場で実際に相談や交渉の経験を重ねる小田原さんを講師に招き、お話を伺うことにした。

第一部は「アートワーカーと権利」と題した小田原さんの講演。小田原さん自身が学生時代に嫌な思いをし、大学を変えていったことや、その経験から多摩美術大学ユニオンを結成した話を聞いた。「その時、先輩が何もしなかったからだ」と10年後に後輩に指摘されるのはなかなかに辛いが、そこから小田原さんが奮起し、日々方々で解決に奔走する実行力は超人的であり、本当に頭が下がる。その他、「表現の現場調査団」https://www.hyogen-genba.com/の「ジェンダーバランス白書2022」が露わにした業界全体に蔓延るジェンダーバランスの不均衡や、世界人権宣言の第一条にある「同胞」の原文が「brotherhood」であったことなど、そこに自分が漏れ出ている当事者であるがゆえに、社会における権力の所在が限定的であることに対し「可変性がある」と感じ、その後の彫刻研究や作品制作に影響を及ぼしているという。

アートワーカーの話に戻ると、前提の確認として第21回ユネスコ総会(1980年)で採択された「芸術家の地位に関する勧告」の紹介があった。「文化的な労働に積極的に従事する者として認められる権利」「労働者の地位に属するすべての法的、社会的及び経済的便益を享受する権利」があること、あわせて「芸術家が専門的職種として認められ、労働組合又は専門的職能団体を結成する権利を有するべきである」ことを共有した。そもそもアートワーカーもひとり一人違いがあり、人としての当たり前の権利が守られなければならない。

次に、その有する「権利」とは裏腹に、長年にわたって美術に限らず表現の分野特有の空気として、仕事を受けたときに交渉や協議そのものがしづらい雰囲気があることが指摘された。それを解消する手立てとして、対等な立場で交渉や協議をするには「契約」が必要であり、文化庁が策定したガイドラインが紹介された。読み込むには時間がかかりそうだが、これからは契約に関しての知識を身につけ、自分を守る術を積極的に身につけていくことも必要だろう。あわせて、依頼する側のアップデートはまったなしの状況だ。表現の現場調査団の「ハラスメント量的調査白書2024」でも、表現に関わる場とそれ以外の場で明らかな差が露呈し、あまりのハラスメントやその後の不調の多さに愕然とした。力の不均衡をなくし、ともにクリエイティブな場を創造していく発展的な機会を目指したい。最後に「アーティスツ・ユニオン」http://artistsunion.jp/等の活動を例に、今置かれている環境を変えていくために、横のつながりを持つこと、助けあい励ましあうことで前進する希望が示された。

第二部はかわるあいだの美術実行委員会のメンバーがそれぞれ経験したハラスメントについて語った。思い返すのは辛いことだが、実際の体験談を聞くことで参加者に具体的なイメージを伝えたり、自分も同じような経験があると共感してもらう機会になるのではと考えた。美術に限らず、イラストレーターやデザイナー、キュレーター、人権に関心のある一般の方など多くの参加があった。フリートークでは音楽業界でも同じ構造があり、思い悩むケースがあることなど共有され、鹿児島の表現の現場でもハラスメントや契約が曖昧な状況が明らかになったことは、改善に向け、意識を高めるための第一歩となっただろう。私自身、学芸員時代を振り返り、特権的な立場でなかったかと当時を省みる。今後も、アップデートし続け、学ぶ機会を鹿児島で作り、啓発していきたい(原田)。



参考:「フリーランスアーティスト・スタッフのための契約ガイドブック」

 
 
 

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