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すべての記事art のための table talk vol.12 レポート

  • kawaruaidanobijyut
  • 7月30日
  • 読了時間: 6分

更新日:7月31日

[7月のトピック]  

第12回 「文化はどこにある?」―空きスペースから始まったわたしたちの問いー

[日時]  

2025年 7 月 26 日(土) 15:30−17:30

[会場]  

garden7(マルヤガーデンズ 7 階) 鹿児島市呉服町 6-5

[参加メンバー]  

かわるあいだの美術実行委員(木浦奈津子/画家、さめしまことえ/美術作家、原田真紀/インディペンデント・キュレーター、平川渚/美術作家)  

黒岩美智子(ガーデンズシネマ支配人)

[ゲスト] 四元朝子さん(広報 PR,翻訳,コーディネーター)




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今回は、「文化はどこにある?-空きスペースから始まった私たちの問い-」というトピックで、四元朝子さんをお招きし、2012年に第五次鹿児島市総合計画基本計画に基づき設置された、かごしま文化情報センター(KCIC)の第一期(2012-16)ついてのお話を伺いました。


今からちょうど12年前、鹿児島市の『文化薫る地域の魅力づくりプラン』の中で、地域・音楽・伝統芸能に重点を置き、市民みんなで守り育てる拠点として、市役所みなと大通り別館1階にKCICが誕生しました。


拠点づくりの提案をしたのは、『文化薫る地域の魅力づくりプラン』を推進する音楽・美術・伝統芸能の3つの部会の中のひとつ「美術部会」メンバーでした。市内の文化団体やNPO法人、大学関係者、民間企業など様々な分野の専門家が集まり、鹿児島にどんなことが必要か考える中で、現代アートを中心に、市民が質の良いアートに触れ自由に語り合う拠点を作りたい、という提案が通り、当時の行政の力強い後押しもあって5年間という期限付きでKCICの立ち上げが決まります。


そして当時、スパイラル(東京)や山口情報芸術センター[YCAM]、フランスなど国内外の文化芸術に学んできた鹿児島出身の四元さんがチーフとして呼ばれることとなったそうです。


いくつかの候補地の中で最終的に決定したのは、公園に面する市役所みなと大通り別館1Fです。もともと自動販売機が置かれているだけの空きスペースでした。この場所に、建築を専攻する教員と大学生たちと協働して「積み上げストックする場所」、「情報があつまる場所」として大きな本棚とギャラリーを作りました。


この場所を拠点とし、アーティストとの協働・アウトリーチ(広く人に届けること)・人材育成の3つの柱で様々な試みが行われます。

鹿児島在住の写真家下薗詠子さんとプランナー松田朋春さんによる「美人島」ポスター撮影では、「いまだ視ぬものをさがしに」とういうキャッチコピーでKCICのオープンを知らせるポスター11種類を制作し、街なかに設置しました。

「わたしたちの地域辞典をつくるワークショップ」では、市内の5か所に出向き、市民とともに、「この地域に独特だと思うものや風景」、「他の地域の人に紹介したいものや風景」などを撮影し、タイトルをつけて辞典の様式に編集しました。

アートマネージメントラボでは、当時BEPPU PROJECT代表理事だった山出淳也さんなど、全国の第一線で活躍される方々がレクチャーをしてくれました。


四元さんは、当時、本気で拠点を作ろうとした美術部会と行政の熱量や、県外からの大きな期待、当時のわくわくした気持ちなどをお話しされました。

また、「いまだ視ぬものを探しに」というキャッチコピーは「問いを立てる」という事で、明確な答えがある事はやらなかったこと、市民と共に何ができるかアイデアを話し合って実践していったこと、活動で生まれた多くの出会いについてもお話してくれました。


第一期の試みはすべて、電子書籍にまとまっていて、今もみることができます。電子書籍 BCCKS の本棚 https://bccks.jp/user/126254 にアーカイブされています。


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■会場との意見交換

かわるあいだの美術実行委員メンバーや、会場とのやりとりでも大変多くの意見が出ました。


・KCICが希望。心の支えだった。

・やっていることが分かりにくかったので、周りに伝わっていないもどかしさを感じた。

・当時子供が小さくて社会から取り残されていると感じていた。家の近くでKCICがイベントをし、参加できてとてもありがたかった。

・当時KCICがあることで「鹿児島面白くなりそうだ」という声を多く聞いた。

・今回のトークイベントではじめて知った。近くに住んでいたのに知らなかった。あの体制を維持できなかったのか? せっかくいい活動だったのに、と悲しくなった。

・現在進行形のアーティストや写真家などが長期スパンで来てくれる。彼らの仕事を観れる場だった。

・運営に携わっていたが、作家活動をしながらその持ち味を生かしてKCIC運営で仕事をしてほしいと言われ嬉しかった。

・実験的な事を模索しながら、行政に求められる事に答え、かつ市民に分かりやすく伝えられるか悩み、苦労した。



■どのような場だったか

・これまで単発のイベントはあったが、それをストックする場ができた事は大きかった。

・「場」があって「人」が必ずいる。接点を求めて色んな人がやってくるハブみたいな場所。

・四元さんがネットワークを持っていた。活躍しているアーティストやアート系NPOの代表などを呼ぶ力があった。

・四元さんや原田さんみたいな、知識と経験とネットワークを持つ人はとても貴重。場所ができて、そこに適切な人がいるかいないか。当時のKCICにはいた。文化政策が進んでいる地域にはそういう人がいる。場と人材はセット。

・当時、補助金の申請もしていた。公共だから出せる補助金がある。市役所の方に手伝ってもらって申請するのは、他の地域のアートプロジェクトでも当たり前だった。


■必要なことは?

・文化の担い手側が過積載になっている。何かあれば失われてしまう。公共がサポートしないと個人では維持できない。鹿児島は、鹿児島市以外はさらに弱いし儚い。

・鹿児島では、美大などに出た人が帰ってこれる土壌があるのか

・公共にとって、目に見えないこと、つながり、信頼関係などもストックされていくことが大事。公共だから広く届けられるし長く続けられる。

・今も続いていたらどうだったのかなと思わずにはいられない。

・価値を言語化することが重要

・行政の方との勉強会とか、もっとできることがあった。

・秋田はこの8年間で、まちにもたらしたものが大きい。作り手や移住者が増えたなど、目に見える効果があると思う。公的な税金を使うので、価値を可視化して説得することを民間がサポートして、行政と協働する。

・当時、KCIC運営側も行政側も、評価軸が定まってなかったのではないか?

・鹿児島にあるといいと思うのは、専門的能力のある人が集まるラボのようなチーム。たとえばYCAMのラボは、様々なスキルの人がつながって一緒に作れる場所。作る力を伸ばす場所。出会う場所。

・フランスは、現代アートを各地域が保存したり展示したりする公共機関がある。


■さいごに

今回は、来場者からも多くのご意見をいただきました。最後に四元さんから、「アーカイブを作る意義は、何かが途切れた時に誰かが掘り起こしてまた続けてくれること。未来の誰かのために。」というお話がありました。今回の第一期KCICの振り返りは、かわるあいだの美術実行委員会で、前々からやらなければいけないと思っていたテーマのひとつでした。「文化はどこにある?」というテーマで語る事を続けていかなければと感じました。次回は、藤浩志さんをお招きして、さらに「拠点」について考えていく予定です。

(さめしまことえ)

 
 
 

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